ホワイトハンズ大学   


 「障害者の性」の社会史 〜障害者の性にまつわる歴史的出来事の年表式解説〜

(文中の氏名は敬称略:年表の引用・転載・リンクは、自由に行っていただいて構いません)

戦前(〜1940年代):無資料期

1948年〜1970年:暗黒期(社会の死角)

1970年代:萌芽期(一部の研究者の間で話題に)

1980年代:発表期(雑誌の連載、論文の発表)

1990年代:啓蒙期(イベントやセミナーのテーマとして、啓蒙活動が活発化)

2000年代:実践期(事業体の登場)

2010年代〜



 戦前(〜1940年代):無資料期

 戦前より前の時代においては、「障害者の性」に関する文献や資料は、ほとんど存在していない。


 民俗学の分野において、夜這いの慣習のあった江戸〜明治のムラ社会の中で、

 障害者がどのように扱われていたのかを示す断片的な情報は散見されるが、

 文献資料として確固たるものは、見当たらない。


 当時は「夜這い」が共同体社会の性教育システムとしての機能を担っている地域もあったため、

 「夜這いの対象にならない障害者に肉親が性教育を行い、一方が妊娠した」という例は、各地で見られたようだ。


 また知的障害の場合、「ムラの人間が妊娠させて、小屋を作って別居させた」という例もあるが、

 多くの場合、ムラを離れて都市部に流入し、流浪と貧困の中で命を落とす、という事例も多かったらしい。

 (参考文献:赤松啓介『夜這いの民俗学・夜這いの性愛論』 2004年・ちくま学芸文庫)



 戦後〜1960年代:暗黒期

 「障害者の性」が、完全に社会的な死角とされてきた暗黒時代。

 法律的にも、今日であれば人権侵害とみなされるような制度や措置が、陰ながら奨励されていた。


●1940年

◆国民優生法施行。遺伝性疾患をもつ人に限って、優生学的理由による不妊手術を行うことが認められた。


●1948年

◆9月11日:優生保護法施行。優生学的な見地から、知的障害者や精神障害者に対しては、本人の同意無しで

 卵管や精管の切断等によって、生殖機能を断つことができる、という内容になっていた。

 国の統計では、優生保護法によって、1949年〜1994年の間に約16,500人の不妊手術が行われたとされている。

 そのうちの68%は女性であった。


●1953年

◆厚生省が、『優生保護法の施行について』という文書を発表。

 「審査を要件とする優生手術は、本人の意見に反しても、これをおこなうことができる」

 「真にやむをえない限度において身体の拘束、麻酔使用または欺網等の手段を用いることも

 許される場合があると解しても差し支えない」という表現があった。


●1955年

◆障害者施設の年報『近江学園年報』にて、「堕ちゆくもの−春江のかなしみ」が掲載。

 当時は、知的障害のある人たちの性や結婚を問題視する記述が多かった。


●1956年

◆『手をつなぐ親たち』3号〜6号に、知的障害のある人たちの性・結婚に関する記事が掲載。


●1957年

◆東京都大田区の脳性まひ者数名の呼びかけで、

 「青い芝の会」(日本脳性マヒ者協会・青い芝の会)結成。

 優生保護法改訂の動きに対して活発な反対運動を展開し、同法案を廃案に追い込んだ。


 神奈川県では、県の子ども療育センターの行っていた胎児チェックを二年に及ぶ交渉によって

 中止させ、知事から「県の医療施設では、今後一切胎児チェックは行わない」という確認書をかちとった。


●1962年

◆『手をつなぐ親たち』75号に、知的障害のある人たちの性・結婚に関する記事が掲載。

 (1969年の162号までの間に、7本の記事が書かれる)


●1965年

◆日本精神薄弱者愛護協会発行の『愛護』89号に、知的障害のある人たちの性・結婚に関する記事が掲載。


●1967年

◆『精神薄弱児研究』108号(日本文化科学社)に、知的障害のある人たちの性・結婚に関する記事が掲載。


 1970年代:萌芽期(一部の研究者の間で話題に)

 1980年代:発表期(雑誌の連載、論文の発表)

 1990年代:啓蒙期(イベントやセミナーのテーマとして、啓蒙活動が活発化)

 2000年代:実践期(事業体の登場)

 2010年代〜

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 公民権運動やウーマン・リブといった一連のマイノリティの回復運動を経て、

 1970年代頃より一般的な研究分野となっています。


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