プライベート・ケアガイド【女性関節リウマチ患者の妊娠&出産編】


第1章:女性関節リウマチ患者の妊娠と出産の基本知識

1−1 関節リウマチの女性でも、妊娠&出産は可能です

まずはじめに、「関節リウマチの女性であっても、妊娠・出産は可能である」ということを、しっかりと確認したいと思います。

もちろん、妊娠&出産に当たっては、関節リウマチに伴う医学的なリスクや、周囲の無理解などの社会的リスク、出産後の育児における経済的リスクなどの、数多くのハードルを乗り越えなければなりません。

また病気の進行具合によって、妊娠&出産の危険度は大きく変わってきます。

しかし、こういったハードルを乗り越えて、実際に出産・育児を行っている関節リウマチの女性は、数多く存在します。

関節リウマチ患者には、圧倒的に女性が多く(男性の3〜4倍)、発症年代は、女性の妊娠・出産時期とも重なります。

こうした点もあって、女性関節リウマチ患者の妊娠や出産に関する情報の必要性は、今後ますます増加していくことが考えられます。

本ケアガイドでは、妊娠や出産の問題で悩んでいる関節リウマチの女性を一人でも減らすため、「女性関節リウマチ患者の妊娠&出産」に関する情報を、随時収集・公開していきたいと思います。


1−2 【基本知識】関節リウマチって、どんな病気なの?

関節リウマチとは、一言で言えば「身体中のさまざまな関節に、炎症が起こる病気」 です。

いったん炎症が起こると、腫れや痛みが長期間続き、そのまま放っておくと、骨や関節軟骨が変形・破壊されてしまいます。

そうなると、手や指が変形したり、満足に歩くことができなくなったりと、日常生活に大きな支障が出るようになります。

病気の進行には個人差がありますが、呼吸器疾患や心疾患、貧血や骨粗しょう症を併発することがあるので、早期の治療が必要になります。

日本全国での患者数は約70万人、罹患率は女性が男性の3〜4倍で、30代〜50代の女性に多い病気です。

人種や民族に関わらず、発症率は全人口の0.5〜1%程度です。

関節リウマチが起こる原因はまだよく分かっていませんが、自己免疫疾患(=本来、ウイルスや細菌をやっつけるために働く免疫システムに異常が起こり、自分自身の身体を攻撃してしまうこと)が、原因のひとつとして考えられています。

なお、関節リウマチは、遺伝病ではない というのが定説です。

遺伝的な要因も全く無いとは言えませんが、発症には、感染やストレス、ホルモンのバランスなどの環境要因も大きく関係している、と考えられています。

例えば、全く同じ遺伝子を持っている一卵性双生児で、ひとりが関節リウマチになった場合、もうひとりも関節リウマチを発症する確率は、関節リウマチが遺伝病であれば100%になるはずですが、実際は15%程度だと言われています。

そのため、「関節リウマチの女性から生まれた赤ちゃんは、親の遺伝のために必ず関節リウマチになってしまうのでは?」という心配は不要です。


1−3 妊娠前の準備&事前チェックリスト

まず、関節リウマチの女性が、結婚・妊娠・出産を希望している場合、「できちゃった結婚」及び「計画の無い妊娠」は絶対に避ける ことが肝要です。

関節リウマチの女性が妊娠・出産を行う際には、事前に以下のようなチェックを行う必要があります。


☆身体面での事前チェックリスト

□リウマチが落ち着いた状態にあり、妊娠中に抗リウマチ薬や免疫抑制薬を休止しても良い状況かどうか(抗リウマチ薬や免疫抑制薬は、胎内の子どもに奇形などの悪影響を及ぼす可能性があるため)

□ステロイド薬を服用している場合、その服用量が妊娠中の身体に悪影響を及ぼさない分量かどうか

□リウマチによる内臓障害や合併症が無いかどうか

□妊娠・出産に伴う、抗体のリスクが無いかどうか(抗体の種類によっては、流産や死産、胎児の病気などを引き起こすリスクがあるため)


☆環境面での事前チェックリスト

□妊娠中〜出産後まで、家族や配偶者の協力は得られるかどうか

□育児の環境は整えられるかどうか

□妊娠中〜出産までの緊急時のサポート体制は整えられるかどうか

□関節リウマチの専門医から、適切なアドバイスを受けられる環境であるかどうか


そのため、事前チェックを行わずに「できちゃった結婚」及び「計画性の無い妊娠」をしてしまうと、生まれてくる子供、そして母親になる女性本人にとって、非常にハイリスクな事態になってしまいます。

関節リウマチの女性が妊娠〜出産に臨む場合は、上記のチェックリストを活用して、万全の準備を整えてから臨むようにしましょう。


第2章:妊娠〜出産までの時期別注意点


2−1 妊娠前〜初期(0週〜15週)・・・薬の使用を中止・制限する

抗リウマチ薬の中には、「そもそも使用中に妊娠することができない薬」も数多く存在しているので、妊娠を考えている場合は、まず主治医と相談してください。

どの程度の期間、薬の使用を中止すればいいかについては、リウマチ学会等で様々な基準がありますが、おおむね一排卵期以上〜半年前後です。

非ステロイド系抗炎症薬に関しても、完全に妊娠期間中の使用に関する安全性は確立されていません。

中には比較的安全な薬もありますが、それらに関しても、最低限の使用にとどめるよう、主治医から指示があると思います。

抗リウマチ薬や非ステロイド系の薬と比較して、ステロイド系の薬は、妊娠中でも安全に使用できる、とされています。


2−2 妊娠中期(16週〜27週)・・・リウマチの症状は軽くなります

妊娠中期には、ホルモンの関係から、リウマチの症状が軽くなることが多いようです。(もちろん、個人差があるので、全く軽くならない人もいます)

薬を使用しなくてもよい状態にまで回復することもありますが、油断せずに主治医の指示に従ってください。

妊娠中期以降は、体重の増加に伴って、身体の様々な関節=股関節や膝関節、足の関節に、負担がかかるようになりますので、関節リウマチの合併症で骨粗鬆症のある方や筋力低下のある方は、注意が必要です。

また、妊娠中は通常の妊婦同様、尿路感染症、妊娠中毒症が起こりやすくなるので、毎日の食事バランスに気を遣い、規則正しい生活を送るよう、留意してください。

●貧血・低血圧に関する注意点:

一般に、妊婦は体内を循環する血液量が増えるので、血が薄まることで貧血や低血圧になりがちになります。

また胎児の成長のためにも血液中の鉄分がたくさん必要になる為、ますます貧血になりやすくなります。

人によっては、めまい・頭痛・動悸・息切れといった症状が妊娠初期から続くこともあります。

貧血や低血圧が重い場合は、医師に申告して、適切な薬を処方してもらいましょう。

鉄分の補給のために、鉄剤を処方される場合もあります。

●むくみ(=浮腫)と静脈瘤に関する注意点:

妊娠中は体重が10キロ程度増加するため、血液中に増えた水分が血管の外に出やすくなり、むくみ(=浮腫)が生じることがあります。

人によっては、両下肢がパンパンに膨れ上がってしまうこともあります。

足のむくみは、マッサージを行うと、多少は緩和されるようです。

また下肢静脈瘤(=足の静脈が太くなって、浮き出て見えるようになった状態)が生じる場合もあります。

妊娠がきっかけで静脈瘤となる女性は比較的多く、一般的に妊婦の10〜15%に静脈瘤が発生します。

出産後には、そのうちの80−90%は消失します。


2−3 妊娠後期(28週以降)・・・早産や体重増加による動作困難に気をつけよう

●早産に関する注意点:

妊娠後期には、早産に注意する必要があります。

出血や気分の不快などいつもと違う体調の変化を感じた場合は、すぐに医師や病院に連絡できる体制を予め整えておくことが、ベストです。

関節リウマチは出産後に悪化することも多いので、それを見越して早期入院するもひとつの方法でしょう。

なお、早産は、膣感染症によって引き起こされることもあります。

そのため、妊娠期間全般にわたって、陰部の清潔を常に保つようにしてください。

また破水と尿漏れの区別がつきにくい場合もあるので、注意が必要です。


●体重増加による動作困難に関する注意点:

妊娠後期に入ると、腹部の増大と体重の増加によって、股関節や膝関節への負担が増して、日常の動作や家事が困難になります。

具体的には、トイレの後に自分でお尻を拭けなくなったり、自力でのお風呂の出入りができなくなる、といったことが起こります。

排尿や排便の後始末の困難は、陰部周辺の不衛生を招き、尿路感染症の原因となることがあります。

人によっては、腹部の増大によって、座位を保つことも困難になることがあります。

ベッド上での寝返りや、下着や靴下の着脱も難しくなり、家事一般もなかなか出来ない状態になります。

こういった変化に伴う予期せぬ事故や転倒を未然に防ぐために、妊娠後期に入る前に、予め身体介護、家事の介助プランを立てておくことをお勧めいたします。


2−4 出産時・・・出産後のリウマチ症状の悪化には、要注意!

出産後はリウマチが悪化しやすいので、可能であれば早めに入院して、医師の指示を仰ぐことをお勧めします。

生まれてきた赤ちゃんよりも、母親の入院の方が長引くこともあります。

健常者の女性の中でも、出産後にリウマチを発症する女性も多いので、関節リウマチと出産の間には、何らかの関係があると考えられています。

多くの場合、関節リウマチであっても問題なく普通分娩が可能ですが、股関節や膝関節が動きにくい場合には、帝王切開になることもあります。

関節リウマチの女性から生まれてくる子供は、標準より出生時の体重が少ないこともあるようですが、その後の発育に影響はありません。


第3章:関節リウマチの女性の育児


3−1 育児に関する不安を払拭しよう!

関節リウマチの女性にとって、妊娠や出産よりも大変なのは、むしろ育児です。

未経験者にとって、「リウマチの症状がある状態で、だっこや授乳ができるだろうか」「お風呂に入れてあげることができるだろうか」などなど、育児に関する不安は募るばかりです。

育児に対する不安を払拭するためには、「事前準備の徹底」あるのみ、です。

車いすに乗ったまま子どもを抱きかかえられるようにベビーベッドを改良したり、抱っこ用のヒモを工夫したり、ご近所の人や地域のNPO、行政を当たって、予め自分オリジナルの育児サポートネットワークを形成したり、妊娠中に人形を抱いて、抱っこやオムツ交換の練習をしたりと、やることは山ほどあります。

介助者と連携して、授乳の方法を考えておく必要もあるでしょう。

気合を入れて準備をしていくうちに、育児への不安感はやわらいでいくはずです。

身体障害を持つ育児経験者の中には、「子どもが、自分の障害の一番の理解者、介助者になってくれる」「3歳を過ぎれば、なんでも手伝ってくれるようになる」といった励まされる意見もあります。

決して過度の不安を抱かずに、一歩一歩準備していきましょう。


3−2 母乳と薬の関係

赤ちゃんを母乳で育てる場合の薬の使用については、薬の効果が赤ちゃんに影響してしまうのを防ぐために、必ず主治医の指示に従ってください。

授乳中は、抗リウマチ薬、免疫抑制薬の使用はできないことが多いですが、ステロイド系の薬であれば、一定量を越えなければ、赤ちゃんへの影響は少ないようです。

「どうしても母乳で育てたい!」という場合、薬の使用を中止して、痛みを我慢しながら授乳を行うことになりますが、一度壊れた関節は元に戻らず、その後の育児がより困難になることが予想されるので、主治医や家族とよく検討した上で、判断してください。


関節リウマチの女性の妊娠&出産に関する参考文献:

川合眞一 『ササッと分かる最新「関節リウマチ」治療法』(2008年・講談社)

川合眞一 『やさしいリウマチ治療薬の基礎知識』(2008年・医療ジャーナル社)


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