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 第1章:認知症の定義と分類、認知症ケアの基本

1−1 そもそも認知症とは?


「認知症」とは、「脳や身体の疾患を原因として、記憶・判断力などの障害がおこり、

普通の社会生活がおくれなくなった状態」をさします。


認知症の発症原因は、単なる加齢に伴う脳機能障害ではなく、人間関係や社会的な役割、

日々の生活における孤独や孤立の問題が大きく関わっている、と考えられています。


認知症は、大きく分けて、アルツハイマー型と、脳血管型の2種類に分けられます。


A:【アルツハイマー型認知症】


 アルツハイマー型認知症とは、認知症をきたす疾患の中で、もっとも多い疾患です。

 原因は不明ですが、脳の神経細胞が急激に減ってしまい、脳が萎縮して、

 高度の知能低下や、人格の崩壊がおこります。


 初期の症状は、物忘れのように徐々に始まり、ゆっくり進行することが特徴です。

 過去の古い記憶はよく保たれますが、最近の出来事を覚えることができなくなっていきます。

 そのため、同じことを何度も何度も聞きかえしたり、置き忘れをしたり、ということが多くなります。
 
 抑うつや妄想などを伴うこともあります。運動麻痺や歩行障害、失禁などの症状は、初期にはありません。


B:【脳血管型認知症】


 脳の血管が詰まったり破れたりすることによって、その部分の脳の働きが悪くなるタイプを、

 脳血管性認知症といいます。


 脳血管性認知症は、障害された場所によって、

 「ある能力は低下しているが、別の能力は比較的大丈夫」という様に、まだら状に能力が低下します。


 記憶障害はひどくても、人格や判断力は保たれていることが多いのが特徴です。



また認知症は、周辺症状別に見ると、以下の3つのタイプに分けられます。

(参考:竹内孝仁の症状分類)


1.葛藤型


目の前の状況を正しく理解・対応することができず、それに対する葛藤の表現として、

異常な反応・行動を起こすタイプです。性的問題行動を起こす人には、この葛藤型が一番多いとされています。


主な症状:

●介護の拒否

●家族や職員に対する暴力

●モノ集め(ゴミを集める、他人の持ち物を集める、など)

●人集め(用もないのに、しきりに人を呼びつける)

●異食(身近にあるものを何でも口に入れてしまう)

●弄便(大便を手で触る、壁に塗りつける、など)


上記の症状の発現には、いずれも自分の欲求を理解してくれない介助者に対する抵抗、

そして「孤独からくる不安」が、深く関わっていると考えられます。


異食は「身体の中にモノを詰め込むことで、さびしさを無くしたい」という心理、

モノ集めは「モノを集めることで、さびしさを無くしたい」という心理、

人集めは「人を集めることで、さびしさを無くしたい」という心理から行われるもの、と考えられています。


葛藤型の認知症の人に対するケアは、介助者が自分の都合や偏見に囚われずに

本人の欲求を理解することが大切になります。

それに加えて、「孤独からくる不安」をいかに解消するか、ということが重要なポイントになるでしょう。


2.遊離型


葛藤型とは反対に、目の前の状況に対して全く反応を見せないタイプです。


主な症状:

●無反応(家族や介助者からの呼びかけに反応しない)

●無関心

●無表情(笑わない、怒らない、喜ばない)

●無為(何もしない)

●無動(全く動かない)


遊離型の認知症の人でも、「子どもをみたら微笑んだ」「道端の花を見ると喜んだ」

「デイサービスで昔の歌を歌ったら、一緒に歌いだした」など、

何かのきっかけで感情や表情を取り戻すことがあります。

多くの場合、そのきっかけは、過去の生活でなじみがあったものであることが多いです。


遊離型の認知症の人に対するケアは、この「きっかけ」をいかに発見し、活用するか、ということが

重要なポイントになるでしょう。


3.回帰型


自分の「古き良き時代」=若い頃にタイムスリップしたかのような行動をとるタイプです。


例:

●家族や職員を「生徒」と思って、講義を始める元教員の男性

●誰にでも名前と住所を聞きだそうとする、元保険外交員の女性

●人形を相手にして、「育児」にいそしむ女性

●職員を「部下」扱いし、あれこれ指示を出す元経営者の男性


回帰型は、普段はおとなしいことが多いですが、現実の状況が

その人の「古き良き時代」の懐かしい状況に一致したり、類似したりすると、

上記のような「タイムスリップ」の症状が現れてくることが多いようです。


回帰型の認知症の人に対するケアは、本人の「古き良き時代」がどのようなものであったのか、を理解して、

それに付き合うこと(=同行ケア)です。

(例)「会社に行く!」と言い出す人に対しては、実際に「では、一緒に行きましょうか」と言って、

しばらく近所を一緒に歩く、など。


なぜ、認知症の人が「古きよき時代」に帰りたがるのかというと、今の現実が孤独で辛く、

誰も自分のことを理解してくれる人がいないからです。


その中で、同行ケアをしてくれる人=自分を理解してくれる人が登場すれば、

わざわざ「古き良き時代」に戻らなくても済むでしょう。



1−2 認知症のデータ



認知症の現在の患者数は、180万人前後と推定されています。

患者数は増加の一途を辿っており、2025年には300万人を超える、と予想されています。

発症率は、65歳以上で1〜2%、80〜84歳では8%になり、85歳を超えると、急激に上昇するとされています。



1−3 認知症のケアの基本

本ケアガイドでは、認知症のケア全般に関して詳しく解説することはできないので、

「性機能のケア」にも関わる重要なポイントのみを、簡単に説明します。


@脱水を防ぐ(毎日、1300ml以上の水分補給を心がける)


認知症ケアの基本は、水分補給です。水は、身体全体の代謝を向上させ、認知という精神の働きも向上させます。

「水分補給に失敗すれば、認知症を治すことは永遠に不可能」と断言する専門家もいます。

水分補給の目安は、1日1300mlです。それ以下の場合は、脱水であると考えてください。


水分補給が大切、といっても、単に本人が一人でいるときに水を渡して

「これを飲んでくださいね」というだけでは、まず失敗します。


必ず、ヘルパーや家族、施設職員や他の入居者と一緒に、

「お茶の時間を設けて、集団で飲む」ことを心がけてください。

「個食」ならぬ「個飲」は、まず成功しないと考えた方がいいでしょう。


飲み物に関しても、水やお茶だけだと飽きられてしまう可能性もあるので、

牛乳やジュース、ココアやコーヒー、さらには健康飲料や寒天ゼリーなども併用してみましょう。

なお、アルコール類による水分補給は、最終的に利尿作用による脱水と低血糖を招くので、避けてください。


A便秘を防ぐ(毎日、1500kcal以上の食事を心がける)


便秘は、認知症の症状の発現や悪化につながる、重要な問題です。


高齢者は若い人にくらべて消化機能が落ち、便通の間隔が長くなっていることが多いです。

1週間に1回の排泄で特に問題なく暮らしている人もいます。

便秘の基準は、個人個人の生活状況・体調に応じて柔軟に判断されるべきですが、

目安としては、「5日間排便が無い」ことを基準にすればよいでしょう。


便秘を解消するためのポイントは、以下の通りです。


(1)下剤をやめる

逆説的ですが、下剤は便秘解消そのものには、あまり効果的ではありません。

高齢者には下剤が効かない人も多く、仮に効いた場合でも、中途半端な時間に

突然便意に襲われ、トイレに間に合わず周囲を汚してしまうケースもあります。

こうした排泄トラブルが、高齢者の自尊心を著しく傷つけてしまうことは、想像に難くないでしょう。

また、それが原因でベッド上での生活やオムツの着用を余儀なくされた場合、

認知症の症状がさらに悪化してしまうこともあります。


(2)規則正しい食事・生活リズム


ポイントは「昼間の運動」と、前項で述べた「脱水予防」です。

昼夜のリズムをきちんとつけることで、排泄のリズムも整います。


また脱水は夜間の覚醒やせん妄を引き起こす原因になり、それが元で生活リズムが

崩れてしまう場合があるので、毎日の水分補給は欠かさず行ってください。

水分補給がしっかり行われていれば、毎回の排泄もスムーズになり、便秘も予防できます。

「起床時の一杯の水」が、高齢者にとって毎日の快便につながる、という報告もあります。


(3)常食&食物繊維の多い献立


排便は、直腸内の便量の多さによって決まります。

おかゆなどの固形成分の少ない食事が続くと、結果的に便量が少なくなり、

便秘の原因になってしまいます。したがって、通常の食事=常食をメインにするのがベストでしょう。


献立は、食物繊維の多いものにすることが望ましいです。市販の食物繊維飲料を併用してもいいでしょう。


(4)とにかく歩く!


便秘を防ぐための運動のポイントは、@全身運動であること、

A軽めの有酸素運動であること、B立つ&歩く運動であること、などが挙げられます。

毎日の散歩や、民謡、踊りなどをケアに取り入れるといいでしょう。


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